福岡高等裁判所那覇支部 事件番号不詳 判決
主文
原判決中無罪部分を除くその余の部分を破棄する。
被告人を沖繩の刑罰法令による懲役一年六月に処する。
領置してある自動小銃一丁(原審一、九六八年押第二号)を没収する。
原審における訴訟費用中証人金城春男、同西江秀夫、同門口正夫に各支給した分を除くその余を、被告人の負担とする。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人池原茂男作成名義の上告趣意書と題する書面に、これに対する答弁は、検事与那嶺茂才作成名義の答弁書に、それぞれ記載されているとおりであるから、いずれもこれを引用し、これに対しつぎのとおり判断する。
控訴趣意第一点(事実誤認の主張)について。
所論は、要するに原判示事実第二の3につき、被告人には威力業務妨害教唆の事実はないにもかかわらず、右教唆を認定した原判決には判決に影響を及ぼすこと明らかな事実誤認があると主張するものである。
しかしながら、所論指摘の原判示事実は、原判決挙示の関係各証拠により優に認定することができ、本件記録を精査、検討してみても、原判決に所論のような事実誤認は認められない。なるほど、原判示の被告人の教唆行為自体を認定するに足りる証拠としては、原審第八回公判調書中の証人田場盛雄の供述記載部分が存在するのみであるけれども、右証拠の内容を他の関係証拠と対比しつつ、仔細に考察してみるに、所論のようにその信用性に疑いを容れる余地があるものとすることはできない。とくに、同証人が被告人の属していた、いわゆる山原派から、これと敵対関係にあつた普天間派に移つたことは、その供述からも窺われるところではあるが、その時期は、一、九六七年六月一五日頃であるというのであり、しかも同証人としては、それ以前山原派に属していた当時から、本件につき被告人に不利益な供述をしていたであろうことは、その一、九六六年一二月一五日付の検察官調書の存在していることからも優に窺われるところであるので、同証人の属する派が変つたことを、その証言の信用性を否定する一つの根拠としている所論は、失当というのほかはない。また、所論援用の証人川上勝男、同玉那覇忠勝、同宮城積仁の各証言並びに被告人の警察官調書中には、それぞれ被告人の本件罪責を否定するような部分が存しないわけではないが、右各証言は、それぞれの証人の被告人との関係、立場から必ずしも信を措きがたいものがあるといわざるを得ないし、しかも前記田場証人の証言内容をみるに、一、九六六年七月七日に川上勝男、玉那覇忠勝、新垣松盛、横田永繁等と一緒に胡屋の朝日パチンコ店に行つたが、それは、被告人を初めとして、嘉手苅文一、玉城進市、宮城積仁等から行くように言われたことによるもので、被告人からは「胡屋の朝日パチンコ店は泡瀬派の繩張りだから、そこの客の邪魔をして来い」と言われ、「客を少なくして来い」とか、「金を持つて行つてパチンコ玉を買えば営業妨害にならない」とも言われた、「このように言われなかつたら行く気はなかつた、とくに被告人が命令しなかつたら行かなかつた」という趣旨のものであつて、前記各証言等に比しより具体的であり、かつ、被告人の面前における供述でもあるので、所論援用の前掲各証拠をもつてしても、その信用性を否定することはできないものというべきである。論旨は理由がない。
同第二点(量刑不当の主張)について。
よつて、所論にかんがみ、原審記録および当審における事実取調の結果をも参酌して審按するに、本件事案の罪質、態様、被害の程度、とくに原判示第一の各銃砲等の不法所持の危険性、原判示第二の各所為の社会に及ぼした影響等に徴すると、犯情には軽視を許されないものがあり、被告人の責任は重大であるといわなければならない。しかしながら、他方、現在では前記山原派も解体し、被告人は本件犯行後前非を反省、悔悟し、自動車運転手として正業に精進して来ており、かつ、現在では妻子とともに円満な家庭生活を営んでいること等、被告人に有利な情状を斟酌すると、原判決の量刑は刑期の点でいささか重きに過ぎるものと認められるので、若干これを軽減するのが相当である。論旨はこの限度において理由がある。
よつて、本件控訴は理由があるから、刑訴法三九七条一項、三八一条により原判決中無罪部分を除くその余の部分を破棄したうえ、同法四〇〇条但書の規定に従い、さらに自ら、つぎのとおり判決する。
原判決が認定した事実に法律を適用すると、被告人の原判示第一の各所為は、いずれも沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律(以下、単に「特措法」という。)二五条一項前段、布令一四四号二、二、五、および二、一、一三、高等弁務官布令一四号二条に、原判示第二の1、2は特措法二五条一項前段、沖繩の刑法六〇条、二三四条に、原判示第二の3は同法六〇条、六一条一項、二三四条に各該当するところ、原判示第一並びに第二の各所為は、いずれも犯意継続して行なわれたものであるから、一、九六八年立法一三八号附則二項、右立法による改正前の沖繩の刑法五五条により右第一並びに第二の各罪につき、それぞれ連続一罪として処断することとし、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は沖繩の刑法四五条前段の併合罪の関係にあるので、同法四七条本文、一〇条により重い原判示第一の罪の刑に法定の加重をした所定刑期範囲内で前示情状にかんがみ、被告人を懲役一年六月に処し、領置してある自動小銃一丁(原審一、九六八年押第二号)は原判示第一の2の罪を組成した物で、かつ、被告人の所有に属するものであるから、特措法二五条一項前段、沖繩の刑法一九条一項一号、二項によりこれを没収することとし、原審における訴訟費用中証人金城春男、同西江秀夫、同門口正夫に各支給した分を除くその余は、刑訴法一八一条一項本文に従い、被告人に負担させることとする。
よつて、主文のとおり判決する。